2018.10.04
請川 俊之(Star FACTORY)
  • Food
  • 天王寺・新世界・住吉

profile

2014年、株式会社Star FACTORY入社。フリーペーパーの編集、取材、 執筆をはじめ、企業ホームページのWEB原稿や広報誌の制作など、 幅広いジャンルの制作に携わる。現在は某グルメサイトの撮影を行うなど、 撮影もこなすカメライターとしても活動中。得意分野はエンタメと紀行文。 西成生まれ、西成育ち、一部伊丹成分が入ったほぼ生粋の大阪人だが、あまりそうは見られない。

大阪のミックスジュース飲み比べ!

発祥の店から自販機まで。
大阪名物ミックスジュースの味を徹底調査!

通常「ミックスジュース」とは、複数の果物を混ぜ合わせたジュースのことを指すと思いますが、大阪では違います。
大阪では果物だけでなく「牛乳」を混ぜたものを「ミックスジュース」と呼ぶことが一般的で、昔ながらの喫茶店でミックスジュースを注文すると、ほぼ牛乳入りのミックスジュースが登場します。
ミックスジュース発祥の店を取材してその歴史を調べるとともに、それぞれの店でどんな味の違いがあるのか調べてみました!
ミックスジュース発祥の店「千成屋珈琲」
大阪メトロ動物園前駅側から新世界「ジャンジャン横丁」に入るとすぐに見つかるのが「千成屋珈琲」という喫茶店。
昭和23年、初代店主恒川一郎さんの創業で、最初は喫茶店ではなく果物店でした。
戦後間もない当時は果物がとても貴重な時代。
誰かが入院したらバナナを持っていくという風習があったほどでしたが、果物は少しでも傷むと店頭に並べられなくなり、それを“もったいない”と感じたのが商品開発のきっかけ。
まだ食べられるけれど店頭には並べられない果物を使用し、当時の栄養があるものの代表的なものとして牛乳を混ぜ合わせたのが、大阪の「ミックスジュース」の始まりです。
果物店から喫茶店へと業態を変え、喫茶店ブームが巻き起こった昭和30年頃、ミックスジュースは次第に注目を浴び始めました。
その影響もあってか、大阪ではたこ焼きプレートが各家庭に普及しているのと同様、ジュース作りのためのミキサーも普及しており、風邪をひいた時に母がミックスジュースを作ってくれるという家も珍しくありません。
現オーナーである白附克仁さんも、そんな家庭で育った一人。
家だけでなく「千成屋珈琲」のミックスジュースを飲む機会も多くあり、慣れ親しんでいました。

店主が3代目の恒川豊子さんになってしばらくした頃、3代目の体調の悪化から店は終焉の危機に。
その時に立ち上がったのが、白附さんでした。
テレビディレクターとして新世界を数多く取材していた白附さんは、子どもの頃に慣れ親しんだ「ミックスジュース」の文化を守りたいという思いと、新世界全体をもっと活性化させたいという思いから、3代目の息子さんを何度も説得。
その思いが伝わり、白附さんは飲食業界に造詣のある株式会社LIFEstyleとタイアップし、4代目店主として店を引き継ぎました。

現在「千成屋珈琲」で販売されているミックスジュースのレシピは昔のまま。
日本の食文化の変化による味覚の変化を考慮し、少しだけ甘さを控えるアレンジを加え、より美味しく飲めるミックスジュースへ進化しています。
日本の観光客だけでなく海外の観光客にも人気が出始め、その情報は様々な方面へと拡散。
今ではジュースを求めて新世界を訪れている人も多いようです。

白附さんにお話を伺うと「子どもの頃から親しんでいたミックスジュースの文化が、簡単になくなってしまうことはどうしても見過ごせませんでした。初代からの味に変化を加えることには迷いましたが、文化を残すためには進化が必要という決意のもと、パティシエなどと研究を重ね、現在のジュースを提供しています。ミックスジュースだけでなく、様々なメニューも開発し、新世界がもっと盛り上がるためのお手伝いができればと思っています」と語ってくれました。
熱い思いに守られている千成屋のミックスジュースは、これからも新世界の一角で、人々に語り継がれていくに違いありません。
千成屋の「ミックスジュース」をいざ試飲!
ここからの記事では、大阪ビジネスカレッジ専門学校の学生さんが、ミックスジュースの飲み比べにチャレンジ!
それぞれの生の声を聞いてみました。

村上さん(中央):果実感があって、とても濃厚! 「本物のミックスジュース」という感じがしました。若い人からお年寄りまで幅広く受け入れられそうな味わいでした。
パラメータ
甘さ:3、果実感:5、口当たり:5、濃厚さ:5、酸味:2

岡元さん(右):ストローを刺すとそのまま立つくらい濃厚! コップから見えるくらい、果実もしっかり入っています。甘すぎず、オーナーさんが言っていたように、串カツの後に飲んでも合いそう♪
パラメータ
甘さ:3、果実感:5、口当たり:4、濃厚さ:5、酸味:1

山口さん(左):スムージーのような飲み心地で、果実感がたっぷりでした。氷と果物がたっぷり入っていて、とても濃厚だったと思います。
パラメータ
甘さ:3、果実感:5、口当たり:5、濃厚さ:5、酸味:2

3人とも果実感5という高評価! さすがは発祥の店で振る舞われる「ミックスジュース」です。
氷を入れたままミキサーにかけるため、シャキシャキ感も楽しめます。
▲ご覧のように果物たっぷり。秘伝のエッセンスが味に奥深さを生み出します。
喫茶店の味を再現した缶ジュース
続いて試飲するのは、朝日放送(ABCテレビ)「ごきげん!ブランニュ」との企画によって生まれたという「みっくちゅじゅーちゅ」。
喫茶店の味を忠実に再現したというその味は果たして!?
村上さん(左):果肉が多めでとても美味しい! 喫茶店で飲むのと変わらないくらい美味しいです!
甘さ:4、果実感:5、口当たり:5、濃厚さ:4、酸味:1

岡元さん(中央):つぶつぶ感とザラザラ感があるジュースでした。甘すぎずちょうどいいと思います!
甘さ:2、果実感:5、口当たり:4、濃厚さ:3、酸味:1

山口さん(右):今まで意識して飲んでいませんでしたが、改めて飲むと本格的な味わいでした。
甘さ:4、果実感:4、口当たり:5、濃厚さ:2、酸味:2

少し評価にばらつきがありましたが、千成屋のものと比べると少し甘めの印象。
缶ジュースですが、喫茶店の味にかなり迫っています!
道頓堀のほど近く、レトロな「純喫茶 アメリカン」
続いては、千日前のラウンドワンがある道を、道頓堀川向きに少し進んだ先にある「純喫茶 アメリカン」。
平日の日中でも多くの人で賑わう老舗の味はいかに?
村上さん:さっぱりしていて飲みやすかったです。色々なフルーツの味がしました!
甘さ:4、果実感:4、口当たり:5、濃厚さ:3、酸味:2

岡元さん:今まで飲んだジュースと比べると甘く感じますが、さっぱりしています。泡がホワホワで、柔らかな印象です!
甘さ:4、果実感:2、口当たり:5、濃厚さ:3、酸味:1

山口さん:りんごの味が少し強いように感じました。飲みやすかったですが、果実感も感じられました。
甘さ:3、果実感:4、口当たり:5、濃厚さ:4、酸味:2

これまでのジュースと比べると、さっぱりとした印象。苺のつぶつぶ感がありました。
店の方に伺うと、旬の果物を使用しているようなので、季節によって味が変わるようです。
阪神百貨店のジューススタンドにもミックスジュースを発見!
阪神梅田本店の地下には、フレッシュジュースを販売する「Fruit King Mizuno」があります。
百貨店で販売するミックスジュースは、世間一般のミックスジュースなのではと思いきや、さすがは阪神。
しっかりと大阪流のミックスジュースでした。
さぁ、生徒たちの感想は!?
村上さん:甘すぎず、すっきりとして美味しかったです。朝に飲みたいような爽やかさでした。
甘さ:5、果実感:4、口当たり:5、濃厚さ:3、酸味:2

岡元さん:氷のシャリシャリ食感が心地よく、今までで一番冷たかったです。飲み心地はサラサラでした。
甘さ:4、果実感:3、口当たり:4、濃厚さ:3、酸味:1

山口さん:バナナの味が強いと思いました。果実感が程よく、あっさりしていて飲みやすかったです。
甘さ:3、果実感:5、口当たり:4、濃厚さ:5、酸味:4

評価が少しばらけましたが、印象的にはすっきりとした味わい。
最初はとても爽やかな感じでしたが、混ぜると濃厚になったりしたので、時々混ぜると程よいかもしれません。
総括
以上、4店舗の飲み比べでした。同じミックスジュースでも、店舗によって使用している果物が異なる場合があり、味は様々。
同じ果物を使用していたとしても、どの果物の味を強く出すかによって表情が全く異なるため、店ごとにキャラクターがあると言っても良いでしょう。
個人的にはやはり千成屋の味がバランスが良いように感じました。
大阪の方もそうでない方も、フルーツが好きなら、ぜひ喫茶店に立ち寄ってミックスジュースを注文してみてください。
きっと店ごとに美味しい思い出を作ることができるはずです。